2016年9月9日金曜日

2016年度 夏合宿 第3日目

失礼します。
慶應義塾體育會少林寺拳法部1年の佐藤太紀です。

夏合宿3日目の練習についてご報告致します。

この日は我々1年にとって、今合宿最大の山場が待ち受けていることから、私は言い知れぬ緊張を以て朝の支度をしておりました。「千本蹴り」と呼ばれるそのビッグイベントは、我が部の夏合宿における、古くから続く伝統であり、1年は必ずこれを乗り越えるものとされています。先輩方から聞いた話や、その名前自体が持つ威圧感から、我々1年は、その異様な空間を連想し、内心震えていたように思えます。ですが、千本蹴りが始まるのは午後。我々はまず、眼前に迫る午前の練習を突破しなければなりませんでした。

午前の練習は、ようやく雨が上がったため、今合宿初の屋外でのランが行われました。まずはいつも通り道場でアップでしたが、この日は一味違い、縄跳びを行いました。細かく飛ぶように言われましたが、私は縄跳びが得意でなかったので、縄跳びを放棄して高速足踏みをするよう青木先輩に指示を受け、その通りにしました。この時点で、私の足の筋肉はすでにすり減っていました。

アップが終わると、1キロほど走って近くのテニスコートに集合し、雲がかかり、炎天下とは程遠い弱い日差しの下、今西先輩を主座として、いよいよランが開始されました。片道ダッシュ、往復ダッシュ、シャトルラン、最後には2往復ダッシュなどを何セットも行い、終わった時には全員がへろへろでした。と申しましても、実はそこまで疲労困憊というわけではなく、その理由に、先輩方が何度も何度も気合いを行ってくださったということがあります。今西先輩の方も気合いを快く承諾してくださっていたので、2回走るごとに気合いが入り、結果、きつい練習ではありましたが、道場での練習よりも幾分楽しかったような気がします。

しかし、楽しい時間もこれで終わりです。午後の練習はアップとしてサイドジャンプから始まり、それが終わると、2、3年生は山中湖外周、そして1年生は道場に残されました。

ついに地獄の千本蹴りが現実のものとなったのです。

正直、何を何本やったという記憶はほとんどございません。主将の青木先輩、副将の今西先輩が主座をとり、上段振り子突き、上段直突き、2連突き、蹴り上げ、回し蹴り、2連蹴りなど、各何十本、何百本も行いました。加えて、様々な理由でやり直しが何度も言い渡されました。私も何度か号令を間違えてしまい、そのせいで同期全員がやり直しを命ぜられたことは、今思い返しても申し訳なく、歯痒いばかりです。さらに、途中で気合いが小さいことや、きつそうな顔をしていることなどを理由に笛が鳴り、今西先輩の「はい円になって」と共にラグジャン100回が課されました。何度もそのペナルティは課され、拳立てなども仲間入りして、千本蹴りよりもペナルティの方がきつい気さえしました。

そして、しだいに日が落ちてくる頃、ついにパイプ椅子が登場し、ラストスパートとなりました。男子はパイプ椅子を目の前に置き、倒したら即最初からやり直しの地獄の蹴り上げです。また、女子は応援しながら振り子突きを延々と行います。足が上がらず、何度もパイプ椅子を蹴り飛ばし、途方もなくやり直しを課されながらも、このメニューをついに我々1年はやり切り、これで千本蹴りは終わりだ、と私はそのとき錯覚しておりました。青木先輩は、まだ最後のメニューを残していたのです。

パイプ椅子のルールはそのままで、ただの蹴り上げではなく、屈伸蹴りを行う。これが千本蹴り最後のメニューでした。度重なる何百回ものラグジャンのせいで屈伸する筋肉などとうに尽きてしまっている我々1年にとって、そのメニューはあまりに残酷なものでした。しかし、やりきらなければ、中日は来ない。そう言い聞かせ、我々1年は、筋肉ではなく、気力で足を曲げ、声を出し、全てを出し切りました。考え得る限界を超えても、人間という生き物は、前に進むことが出来る。我々が限界だと思ったものは、実は限界だと錯覚しているだけなのだ。そんな無限の可能性に気づいたとき、すでに千本蹴りは終わっていました。気がつけばみんなで輪になって抱き合い、飛び跳ね、喜びと達成感の渦の中でした。

振り返ると、私のせいで同期全員がやり直しを課されたことは、やはり反省と後悔に資するものであり、この場をお借りしてお詫び申し上げる次第です。しかし、私はそんな逆境の中でもやり切ってくれた同期を、本当に頼もしく思います。そして千本蹴りをやり切った事実は、自分の自信にも繋がりました。自分が限界だと思ったところから、ほんのちょっとでも前に進めるような体験は、この先、我が部の夏合宿以外では得られないものでしょう。この貴重な体験が、我々の人間性を高めてくれることを、誇りに思います。

以上で夏合宿3日目のご報告を終えさせて頂きます。
失礼しました。

慶應義塾體育會少林寺拳法部1年 佐藤太紀

0 件のコメント: